【解説】ローマ字表記、どっちにしよう問題
令和6(2024)年5月14日、盛山文部科学大臣が日本におけるローマ字表記について、文化庁の文化審議会に諮問しました。
ここで議論の対象となっているように、実は駅名や道路標識のローマ字表記と私たちが小学校で習うローマ字表記とには違いがあることはご存じですか?
この記事では、これらの表記法の歴史、特徴、利点と欠点を分かりやすく解説します。
2つの表記方法にはそれぞれに独自の特徴と利点があります。どちらが現代の日本に適しているのでしょうか?
この記事では以下のポイントについて解説します:
- ヘボン式の歴史と特徴
- 訓令式の歴史と特徴
- 実は他にもあるローマ字表記
- 日本の現状とすすきの考え
さあ、あなたはどちらの表記法が良いと思いますか?是非この記事を読んで、自分の意見をコメントして下さい!(参考:「ローマ字に関する国語施策関係年表」)
駅名や道路標識のローマ字表記=ヘボン式
江戸時代末期、嘉永7(1854)年に日米和親条約が締結されて以後、日本に多くの外国人がやってくるようになりました。
アメリカ人宣教師ジェームス・カーティス・ヘボンは安政6(1859)年に来日し、医療活動や英語教育に取り組みました。現在の明治学院大学は、彼の英語塾「ヘボン塾」が前身となっています。
ヘボンは日本初の和英辞書『和英語林集成』を編纂する中で、日本語の発音を英語の発音に近い形で表記することを目的にローマ字表記法を考案しました。後に修正が加えられ、現在、ヘボン式と呼ばれています。
ヘボン式は、例えば「し」を「shi」、「ち」を「chi」と表記するなど、日本語の発音を英語の発音に近い形で表記するため、特に英語圏の人々には発音しやすいものとなっています。
そのため、パスポートや公共交通機関、道路標識などで使われています。
一方で、英語特有の発音規則に慣れる必要があるため、日本語話者にとっては学習が複雑になることがあります。
小学校で習うローマ字表記=訓令式
これに対して訓令式とは、日本政府が公式に定めたローマ字表記法です。昭和12(1937)年に制定、昭和29(1954)年に改定されました。
訓令式は、例えば「し」は「si」、「ち」は「ti」と表記するなど、日本語の音韻を正確に表現することに重点を置いているため、日本語話者が日本語をローマ字で書く際に、発音をそのまま反映しやすいように設計されています。
また、小学校などでも教えやすく、政府公式の表記法として公式文書などでも使われています。
しかし、英語圏などの外国人には、発音が直感的に理解しにくい場合があります。例えば、「し」を「si」と表記すると、英語話者には「スィ」と読まれる可能性があります。
存在する第三の表記法=ワープロ式
パソコンやワープロの普及が進んだ1980年代から1990年代にかけて、日本語の入力方法について様々な研究や開発が行われました。
初期のパソコンやワープロでは、日本語の文字を直接入力することは難しく、ローマ字を入力し、それを変換する方法が採用されました。
例えば「じゅうよう」はパソコンでのローマ字入力であれば「juuyou」と打ち込みますが、ヘボン式では「zyuyo」(母音に長音記号)、訓令式では「juyo」(母音に長音記号)と表記します。
また、「でぃ」の表記はヘボン式では「di」と表記しますが、訓令式にはありません。
一方、パソコンのローマ字入力で「di」と打ち込んでも「ぢ」が出てしまい、「でぃ」と入力したい時は「dhi(又はdeliやdexi)」と打ち込む必要があります。
日本の現状とこの記事の結論
【現状①】「コロナ収束」や円安効果もあって、令和5(2023)年には年間2500万人の訪日外客数を達成するなど、来日した外国人が日本語のローマ字表記を目にする機会はますます増えています。
【現状②】また、グローバル化やデジタル化の社会情勢から、現在の小学校では3年生からローマ字教育と英語教育が始まっています。
このような状況の中で、少し古い記事ですが、以下のような質問がありました。
確かに、英語教育が始まっている現状において、アルファベットの読み方(扱い方)に違いがある訓令式を同時に勉強するのはややこしいですよね。
ヘボン式は、小学5年生から学習するようです。
みなさんはどのように考えますか?
私は現状のままで良いと思います!!
【理由①】訓令式が制定された目的や、現在のローマ字教育が国語に分類されていることから、まずは日本語教育として訓令式でローマ字教育がなされれば良いと考えます。
【理由②】既述の【背景②】にあるデジタル化の社会情勢から、ICT教育の推進に向けて小学生にPC端末が支給されるようになっています。
すると小学生たちはタイピングの練習もしなければならないのですが、その際、使用頻度の高い「し」「ち」「つ」は訓令式のほうが速く打ち込めることができます。
ヘボン式ではそれぞれ「shi」「chi」「tsu」と打ち込まないといけないため、タイピング学習において手間です。(「じゃ」「じゅ」「じょ」については「ja」と打ち込めるヘボン式のほうが有利)
【理由③】ヘボン式への批判として、「英語話者以外には読みにくい」や「そもそもローマ字表記は日本語の表記であるから、英語話者への気遣いは不要」などがあります。
じゃぁ知恵袋にあったようにパスポートや道路標識も含めて訓令式に統一すればいいかと言うと、さすがにこれだけ外国人が来日するご時世において、それは不親切だろうと思います。
世界で使われている言語を考えてみても、英語話者にとって読みやすいことはベターな選択だと思います。
【提案】それでは小学3年生の混乱はどうするんだと言われると、少し言葉に詰まります。
ローマ字学習を小学2年生に前倒すことは非現実的でしょうか?
令和6(2024)年5月現在、私の娘は小学2年生ですが、普段目にするローマ字から、多少法則は覚えています。興味があったからか、アルファベットも言えます。授業でやってできないことはないと思うんですけどねぇ…。どうでしょう?
ここまで記事を読んで下さった読者の皆さんはどう考えますか?
コメントにご意見書いて頂けると学びと励みになります。また、誤字脱字などありました時もご指摘頂けると幸いです。
読了ありがとうございました!